ヨコエビの小川です。
最近は定量調査のソーティングやら、ガイドブックの作成やら、英語論文の翻訳やらで、
本格的に卒論執筆に取りかかれていません。
秋冬の話題は、もう少し後にまとめて書ければ・・・いいな・・・。
そんな中ですが、お待たせしました、「夏の思い出シリーズ」第2弾です。
9月は夏なのかどうか微妙なところですが、とにかく暑かった・・・
・No.45 葛西臨海公園(西なぎさ)市民調査(9/5)
すでに全体の説明がありましたので、私はヨコエビの話しかしません。
6月12日の調査に比べてヨコエビは減った感じがありますが、定番のAmpithoe,Corophiidae,Melita,Platorchestiaは相変わらず。ただし、Ampithoeは思わぬところから採れました。
浮きです。
海藻は全く付いておらず、フジツボ類が密集しています。
これまでの経験上、Ampithoeといえばアナアオサのような海藻の表面についていることが多く、ちょっとびっくり。
周囲にアナアオサは無かったので、好みの場所に着けなかったということなのかしら?
というわけで、今回のヨコエビはニホンドロソコエビGrandidierella japonicaです(あれっ?どういう訳で?)。
今回得られたサンプルは、持ち帰る途中で激しく破損してしまい、とてもお目に掛けられない状態なので、野島干潟で得られたものが代役で登場です。
上がオスで下がメス。オスの第1咬脚1st gnathopodが発達しているのが特徴です。その他のヨコエビの多くは,、発達するのは第2咬脚の方なんです。
砂泥底を好み、新浜,小櫃川河口干潟,多摩川などで得られます。
前回も採れていますが、葛西では細々といった感じです。
・No.49 大瀬崎ダイビング実習(9/18-20)
番号だけは振ってありますが、今回は外伝的扱いです。
実は私、何を隠そうCカードを持っておらず、今回ようやくオープン・ウォーターをとることになりました。
場所は静岡県。西伊豆の大瀬崎です。ダイビングの適地として広く知られています。
私がフィールドとしている東京湾は概ね砂か泥。
ここは砂利浜で、潜っていくと転石となり、新鮮な景色でした。
湾が違う+磯的環境なので、見慣れた生物は少なく、代わりに目新しい生物のオンパレード。
ここでスクーバ・ダイビング中に見られた生きものの写真をアップするのが普通ですが、残念なことに我が愛機は海面に漬けただけで水没。去年はスノーケリングしても平気だったのに・・・。防水デジカメをお持ちの皆さん、パッキンはこまめに交換しましょう!
夜と朝に曳いたプランクトンネットの中身を確認。
すると、端脚目がたくさん。
今回のヨコエビは、クダオソコエビ属の一種Photis sp.です。
小櫃川河口干潟では、底引き網などで採れます。
概ね同じと考えてよいのでしょうが・・・確証がないのでご勘弁を。
底生というより、こちらも浮遊性に近いヨコエビです。
Ampithoeのように底節板が大きいので、体が幅広く見えます。
第2触角が生える位置はかなり後方なので、他のヨコエビとは顔つきが全く異なります。
触角に長い毛が生えているのも目立った特徴です。
子供らしき個体ばかりが採れました。
あとは、こんなものが・・・
どこかヨコエビに似ていますが、ヨコエビ亜目Gammarideaではなくクラゲノミ亜目Hyperiideaに属する、別の仲間です。
こちらはハッキリとした浮遊性で、種によっては寄生性です。
犠牲はありましたが、得られたものも多く、有意義な実習でした。
スクーバは楽しいけど・・・耳が抜けにくいのがネック・・・
・No.50 小櫃川河口干潟定量調査(9/24-26)
9月の定量調査。
潮が夜に引く時期に差し掛かってきたので、初めての夜間調査でした。
そして、
雨風がヤバイ!
雨粒が「降りかかる」ではなく「突き刺さる」と感じたのは、初めてかもしれません。
それでも、ヤドカリの調査を断行しました。
(24日深夜)
そして、25日深夜。
雨は止み、風は穏やか。
よいコンディションの中でふるいをふるうことができました。
デジカメは、外部メモリ読取部故障&本体起動不全をきたし、ほとんど写真を撮れず。
現在では完全に沈黙です。
防水デジカメをお持ちの皆さん、パッキンはこまめに交換しましょう(大事なことなので2回言いました)
さて、結果ですが、前回と比較すると傾向が違います。
前回は昼間だったので、季節変化なのか時間変化なのかははっきりしません。
今回のヨコエビは、スナウシロマエソコエビの一種Eohaustorius sp.です。(*1)
?
何に見えますか?
とりあえず、拡大してみます。
左が頭、右がお尻、です。
後と前の区別がつきにくいことからこの名があります。
砂に潜ることに特化したヨコエビで、コロコロしており、このように横向きの姿勢をとらせるのはキツイです。
複眼はほとんど退化し、体色もほとんどなく白色で、全身に毛が多いです。
小櫃で砂をふるうとよく出てきますが、その特異な形態には、見るたびに感嘆を覚えます。
卒業研究も佳境。
新たな者共がどんどん出現し、まとまらなくなってきていますが、何とかします。
(風呂田研4年 小川洋)
追記
(*1)Eohaustorius longicarpus ?
この種は日本ではまだ報告がないようで、和名はついていないらしいです。
よく似ていますが、第3腹節の後ろにある棘の形だけが論文の記述と違うので、「?」をつけておきました。ひょっとすると新種かもしれません。
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1 comment:
訂正
×「後と前の区別がつきにくいことからこの名があります。」
○「一般的なヨコエビでは前を向いているはずの第4胸肢が後ろを向いていることからこの名があります。」
和名を命名された石丸氏にご指摘を頂きました。ここに訂正いたします。
小川
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