先週、日本(アジア)で初めてカエルの激減を招くツボカビ症が確認された、とのニュースが出た。東京でペットで飼育していたカエルの死体からツボカビ症が確認されたとのことで、野外への拡大・伝搬が危惧されている。
さて、カエルツボカビ症のニュースを見て、私も何か出来ないだろうか?と考えた。私はカエルではなくプランクトンに寄生するツボカビの研究を続けてきた。ツボカビに寄生されたプランクトンはカエルと同様にほぼ死亡し、野外での寄生率は時として90%以上にもなる。ツボカビの寄生現象は特定のプランクトン種の大量発生(ブルーム)を終焉させる重要な要因なのだ。例えば夏期に大量発生する緑藻類Staurastrumや、春の珪藻Asterionellaは、ブルームの終期にほぼ100%ツボカビに寄生され、湖から姿を消す。
私がカエルツボカビ症問題に貢献できる事は、おそらく「野外でのツボカビの現存量や動態を把握する」事かもしれない。今、生態学者として早急に調べなくてはならないことは、「日本のカエルはツボカビに感染されているのか?」「カエルに感染するツボカビは日本の土地に存在するのか?」といった問題だろう。
水中のツボカビの存在を単独で確認するのは非常に困難である。プランクトンの場合、寄主にくっついた状態で検出する方法が一般的に取られている。それでも見逃される可能性が高いので、ツボカビの胞子体に含まれるキチンを染める染色材(CalcoFluor White)を使い、蛍光顕微鏡下で確認する方法が確実である。
では、水中に漂うツボカビの子供ともいえる遊走子はどう検出すればよいのか。遊走子はツボカビの生活史における一状態である。寄主(プランクトンや両生類)くっついた胞子体が十分に大きくなると、鞭毛のついた遊走子が水中に放出される。遊走子はその大きさが2-5マイクロメートルで、形態的によく鞭毛虫と間違えられがちである。ツボカビ遊走子の特徴は鞭毛虫に比べて丸く、大きな油滴をもつことである。その油滴を染める方法もあるが、特異性が低く、あまり有用ではない。やはりDNAプローブが必須ではないか。現在、開発を進めている。
野外でのツボカビの動態を把握するうえで、食物網構造を考慮に入れることも大切である。プランクトンに寄生するツボカビの遊走子は、その大きさと形態から、ミジンコに食べられ消化されることが明らかとなった。ミジンコがいることでツボカビの寄主となる珪藻や緑藻は病気にならずに済む場合もある。カエルの遊走子はどうなのか?ミジンコか何かに食べられるのか?また、ツボカビに寄生されたカエルが鳥などの捕食者に食べられた場合、ツボカビ感染症は広がるのか、抑えられるのか?ツボカビは消化されるのか、あるいは消化管の中でも生き残り、糞を介してより広域に広がっていくのか?
これらの問いに答えるべく、カエル博士、長谷川雅美氏と昨日チームを結成した。今後、大学院生や他の専門家と協力し、ツボカビ症問題の解決に貢献していきたい。
Monday, January 15, 2007
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1 comment:
サイエンスゼロを見て書いてます。ちゃんと美人に撮れてました。貴重な研究を有難うございます。まじめな研究の場にこんな質問で恐縮ですが、サイエンスゼロの背景に映っていたミジンコの模型に惚れました。どこかで手に入るのでしょうか?どうか教えてください。
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